うん日のへにより

もやしと豚肉を炒めたやつ

浪漫熊

 熊のスパイクは丘の上で星空に手を伸ばしていた。届きそうだ。もう少し高い丘に登ってもう一度手を伸ばした。届かない。

 スパイクはさらに高い場所はないかと考えて、家の屋上に思い当たった。丘を下りて家へ向かった。

 屋上へ続く梯子を登っていると気持が膨らんでいった。次は届くかもしれない。

 屋上に着き星空に手を伸ばした。さっきよりも星を掴めそうだ。あと少し、あと少しだ。しかし星は掴めなかった。

「惜しいところまでは来てると思う。もう少し、工夫次第では届くはずだ。」

 スパイクは方法を考えることにした。

 

 スパイクは恋をしていた。

「ペギーちゃん。好きだ。」

 ペギーは振り向きもせずに歩いている。

「ペギーちゃん、とってもかわいいね。」

「ええ。」

「ペギーちゃん。」

 ペギーは目的地の池に着いた。

「ペギーちゃん、どうしたら僕に振り向いてくれるかな。」

 ペギーは水を舐めがてら言った。

「お星様をプレゼントしてくれたら付き合ってあげる。」

 

 次の日、スパイクは豚のジェミーを探してあちこち回った。

 ジェミーは沼地でごろごろしていた。

「あ~。」

「ジェミー。協力してほしいことがあるんだ。」

 ジェミーはごろごろするのをやめて、それからうつ伏せになるために少しゴロゴロしてから立ち上がった。

「やあスパイク。挨拶から始めよう。」

「やあジェミー。いい天気だね。」

「そうだ。とってもいい天気だ。」

 沈黙。その間二人はハニカミあったりキョロキョロしたりもじもじしたりしていた。

「それで協力してほしいことって。」

「宇宙へ行くのを手伝ってほしいんだ。」

 

 作戦はこうだった。丸太と木の板でシーソーを作り、スパイクが片側に乗る。ジェミーは屋上から飛び降りてシーソーの逆側に落ちる。スパイクは宇宙へ飛び出す。

 宇宙服は蜂蜜を全身に塗りたくることで再現することにした。

 

「スパイク、準備はいいか?」

 蜂蜜の化け物は笑顔で答える。

「ああ!バッチリだ!」

 ジェミーは屋上から勇気を出して飛び降りた。その重たい体は急速に加速していき、重みをぐんぐん増していく。

 ジェミーの体は見事に板の上に落ちた。その計り知れない一撃により、スパイクの体は一瞬で空中へ投げ出された。

「行け!スパイク!」

 どんどん宇宙へ昇っていくスパイク。空中で静止するスパイク。落下するスパイク。地面に叩きつけられるスパイク。

 

 目が覚めるとスパイクはベッドの上にいた。

「ここが、宇宙?」

 ジェミーはタオルを絞りながら答える。

「広い意味ではな。」

 沈黙。二人は各々落胆の気持ちに浸っていた。

 ジェミーはレモネードを差し出してスパイクに訪ねる。

「それで星は手に入ったかい。」

 スパイクは考える。

「手に入ったかは分からないけど、地面にぶつかる瞬間、光が迸ったよ。」