残像
男はバイクでひったくっていった。
「おかあさん!」
脇に抱えられた女児は叫んだ。おかあさんには「おかあさん⤵」と聞こえた。最後に聞く我が子の言葉がドップラー効果を纏ったものであることは耐え難かった。
それを見ていた暴走族は男を追跡し始めた。男を素直に追跡する者もいれば、先回りする者もおり、すぐに追い詰めることに成功した。
「追い詰めたぞ」
族長は男に言った。
しかし男は笑っていた。
「追い詰められたのはどっちかな」
族長は男を殴った。男はポケットからナイフを取り出そうとしたが、すぐに勘づかれ指を折られた。膝蹴りをみぞおちに食らい、地に伏した。
女児は無事母親の元へ届けられた。
男は刑務所に送られた。